病院で遺言書を作成することは可能ですが、いくつかの重要な手順と注意点があります。
以下に一般的な流れと専門家に依頼した場合のメリットとその流れを説明します。
目次
Toggle病院・施設で遺言書を作成するときの一般的な流れ
1. 遺言の種類を考える
日本の法律では、主に以下の3種類の遺言があります。
- 自筆証書遺言(本人が手書きで作成)
- 公正証書遺言(公証人が作成)
- 秘密証書遺言(本人が作成し、公証役場で確認)
病院で作成する場合、本人の意思確認が重要なため、「公正証書遺言」が最も確実で、後々のトラブルを防ぐのに適しています。
また秘密証書遺言は主流ではなくお勧めしません。(公証人の先生曰く年に一度あるかないかということですので、ここでは割愛します)
2. そもそも出張作成が必要か検討する

公正証書遺言を作成する場合、病院・高齢者施設への出張対応も可能です。
通常であれば、遺言者が公証役場に出向いて作成するのが一般的です。
また、入所が一時的に施設等であれば「外出」をして作成する方法もあります。
しかし、病状や歩行状態が思わしくない方の場合は(公証人の出張費用はかかりますが)
公証人が病院に訪問し、本人の意思を確認しながら遺言書を作成してくれるほうがいいでしょう。
出張がいいかどうか判断に迷うときはご相談ください
3. 証人の準備
公正証書遺言を作成する場合、2人の証人が必要です。ただし、以下の人は証人になれません
- 相続人(遺言で財産をもらう人)
- 未成年者
- 公証人の関係者
- 精神疾患などで判断能力に問題がある人
法律上、友人や親族(相続人以外)も問題はありませんが、証人には遺言者の財産内容や財産の分け方などを知られてしまうので、一般的にはおすすめしません。通常、専門家に証人を依頼することが多いです。
4. 遺言書の内容を考える
ご自身の財産の分け方を考えます
一般的に、ひとつの不動産を持分として数名に分けて渡すようなことはおすすめできませんし、株も端株を生じるような分け方をすると、後々手間が非常にかかるきっかけとなってしまいますので、お気を付けください。
5. 公証人に出張依頼の確定依頼する
出張で公正証書を作成すると決めたら、公証役場で予約を取りましょう。
ですが、病院施設で遺言書を作成するという特殊な事情の為、不透明な手順を含め、個人の方で公証人の出張を手配すると手間取ってしまうことも多いかと思います。
通常は出張の調整も含め、遺言書の作成の下準備の時点から、専門家に依頼することが多いです。
専門家に依頼すると得られるメリット
専門家に任せた場合の流れ
1.病院施設に訪問し、ご本人と面談、遺言書作成のご依頼を受任します
弊社がお手伝いする場合、ご本人様との面談の後、ご依頼を頂きます。
ご面談の際に、どんな内容の遺言書を希望されるのかを伺って、
書類取得の了解等を得て、遺言書作成のための委任状を頂きます。
2.書類の取得作成と案文作成を一気に開始します
伺った内容から、どのような遺言書を作成すべきか検討して、文章化してきます。
- 相続人(またはその他の人)の「誰に」「何を」「どのくらい」残したいのか
- 誰に残したくないのか 問題になりそうな人はいるのか
- 相続の手続きを進めていく代表者にふさわしい人はいるのか、必要に応じて「遺言執行者」を検討(専門家等含む)
- その他…
この文章(案文といいます)によって、財産の行方を確定していきます。本人のご希望が現実に叶うよう、配慮しながら遺言の起案を行います。
3.公証役場との打ち合わせを代行します
公証人の先生も多忙であり、何度も出張を繰り返すこともできません。基本的には公証人は作成当日まで、依頼者に会うことはありません。
一般の方が何度も公証役場に行き過ぎて、繰り返される修正・相談に
「内容が決まってからまた改めて来てください」とお断りされる例を何人も見てきました。(公証役場は文書を作成するところで、終活相談する機関ではありません。)
公証人が出張をするのは原則、作成時の1回です。1回がほぼ勝負です。
公証人は作成当日まで、依頼者に会うことはないため、弊社との打ち合わせの内容から案文を作成することになります。
そのため、特にこちらの強い希望がある場合、ここで公証人にお伝えして遺言書に記載していただけるよう依頼することになります。
また、遺言書に記載したい物件の証明書(いわゆる登記簿や評価証明)や、相続人や受遺者の戸籍等、公的な書面が必須となりますが、書類の取得は弊社で一手に代行して行い、公証人に直接お渡ししますのでご安心ください。
4.施設側と相談し、遺言書作成の際の場所確保、プライバシ―確保のお願いします
遺言書の作成当日は、極力個別対応が可能な場所を確保します。
遺言書の作成なので、財産の内容や相続人の関係等が外部に知られないよう、弊社からも施設に状況のお話をして、時間設定と場所の確保をお願いします。
必要であれば、施設責任者の方や、病棟の管理者の方ともご相談します。
5.当日、公証人と証人が一緒に出張いたします

作成当日は公証人と証人2人(それまでの担当者及び弊社スタッフ)でお伺いします。当日の作成時間としては30分から45分程度です。
別室等にご案内し、プライバシーの確保の上で、公証人があらかじめ打ち合わせで確認済の遺言書の案文を、音読し、内容の確認を行います。
読み上げた内容の遺言書で間違いがないことを、本人と証人が確認した後、遺言者ご本人が署名・押印を行います。
署名押印の後、公証人も署名し公正証書遺言の完成です。
作成当日に、公正証書の正本と謄本をお渡しできます。
また、今回の様に、出張作成の場合の公正証書遺言でも、原本は公証役場に保管されるため、紛失や偽造の心配がありません。
病院・施設で遺言書を作成するときに必要な書類(一例)
遺言者の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなど)
戸籍謄本(相続人の確認)
不動産がある場合は登記事項証明書(いわゆる登記簿)・評価証明書
預貯金などの資料
証人2人の本人確認書類
番外編:自筆証書遺言を作成する場合
もし時間の調整がつかなかったり公証人を呼べない場合、病院のベッド上で「自筆証書遺言」(手書きの遺言書)を作成することも可能です。
ただし、自筆証書遺言は方式ミスがあると無効になる可能性が高いため、専門家に確認してもらうのが安全です。2020年以降は、法務局に持ち込んで保管する制度も利用できるようになっていますが、実際問題、提出までのステップが複雑で、入院されているような状況下では限界があります。
どうしても、という緊急の際は自筆証書(手書き)での遺言作成も検討してきましょう
作成後の注意点
- 家族に遺言の存在を伝えるタイミングを考える(ただし、内容を教えるかは自由)(そもそも作ったことを教えなくてもよい)
- 保管場所をよく考える
- 定期的に内容を見直す(状況や気持ちが変わった場合、書き直しが可能)
まとめ
病院や施設で遺言を作成する場合は、公正証書遺言を選び、公証人の出張を依頼するのがベストです。自筆証書遺言も可能ですが、法的リスクを避けるため、事前に専門家をいれましょう。
「費用を安くしたい」等々のお気持ちもあるかもしれませんが、後々の手続きを考えると公正証書遺言書は作成しておくべきでしょう。(確実な遺言書でないと、手続きをする時に結果として費用がかかる可能性のほうが圧倒的に多い)
特に、独身の方、お子様のいらっしゃらない方、相続人がご兄弟姉妹になる予定の方、はご検討ください
弊社では、事前に上記の一切(書類作成や、証人の代行、案文作成、公証人との打ち合わせを代行)をすることで、スムーズな遺言作成作成を行います。
なにより、遺言者ご本人様、ご家族様、公証人の先生の負担を減らし、短期間での公正証書の作成を目指します。
何か具体的な状況があれば、個別のご対応をいたします。
まずお話を伺いますのでお気軽にお問合せください。