死亡・相続ワンストップサービスとは、死亡・相続にともなう数多くの手続きを、できる限り一か所・オンラインで済ませられるようにしていく政府(デジタル庁)の取り組みです。ただし2026年8月時点で、死亡届そのもののオンライン提出はまだできません。現時点で実際に使えるのは、市区町村の「おくやみコーナー」、戸籍の広域交付、法定相続情報証明制度、相続登記のオンライン申請などです。
この記事では、「今できること」と「まだできないこと」を分けて整理し、八王子市の窓口情報と、行政のワンストップと私たち行政書士のワンストップサービスの違いまで解説します。
記事執筆:行政書士法人 相続ワンストップ 代表社員 荒井兄吾
最終更新:2026年8月9日(制度の内容は2026年8月時点です)
目次
Toggle死亡・相続ワンストップサービスとは
死亡・相続ワンストップサービスは、遺族が行う死亡・相続関連の手続きを減らし、オンライン化・一元化していく国の施策です。もともと政府CIO(内閣官房IT総合戦略室)が推進し、2021年9月のデジタル庁発足後はデジタル庁が厚生労働省・法務省と連携して進めています(旧・政府CIOポータルのサイトはすでに閉鎖されています)。
背景にあるのは死亡数の増加です。厚生労働省の人口動態調査では、2023年(令和5年)の国内の死亡数は157万人を超え、調査開始以来最多となりました。人が1人亡くなると、死亡届に始まり、年金・保険・税金・不動産・預貯金と、手続き先は役所だけでも複数の課にまたがり、民間を含めると数十件になることも珍しくありません。どの手続きが自分に必要かを把握すること自体が難しい——これがこの施策の出発点です。
参考:デジタル庁 死亡・相続手続のオンライン・デジタル化(最終更新2025年8月19日)
2026年8月時点で「できること」
現時点で遺族が実際に使える仕組みは、次の4つが柱です。
| 仕組み | 内容 | 窓口・費用 |
|---|---|---|
| おくやみコーナー | 死亡後の役所手続きの総合案内窓口。必要な手続きの洗い出し・書類作成の補助 | 市区町村/無料 |
| 戸籍の広域交付 | 本籍地以外の役所でも戸籍謄本をまとめて請求できる(2024年3月開始) | 市区町村/通常の発行手数料 |
| 法定相続情報証明制度 | 戸籍の束の代わりに使える「法定相続情報一覧図の写し」を交付 | 法務局/交付は無料 |
| 相続登記のオンライン申請 | 不動産の名義変更を登記・供託オンライン申請システムで申請 | 法務局/登録免許税は通常どおり |
おくやみコーナー|八王子市は2021年6月から設置済み
おくやみコーナーは、死亡にともなう役所手続きを1か所で案内する総合窓口です。全国の設置自治体は2018年度(平成30年度)のわずか6自治体から2020年度(令和2年度)には169自治体へ増え、国が設置ガイドラインを示して以降も拡大を続けています。
八王子市でも2021年(令和3年)6月1日から市役所本庁舎に開設されています。利用のポイントは次のとおりです。
- 完全予約制(オンラインフォームで24時間予約可)
- 予約の目安は死亡届の提出から10日程度経過後(届出の確認ができないと予約できません)
- 扱う手続きの例:葬祭費の支給申請、後期高齢者医療の資格返却、国民年金の死亡一時金請求、原付バイクの廃車申告 など
参考:八王子市 死亡に伴う各種手続きについて(おくやみコーナー)
注意したいのは、おくやみコーナーは「役所の中の手続き」の案内窓口だという点です。銀行預金の解約、不動産の名義変更、遺産分割協議など、役所の外の相続手続きは対象外です。
戸籍の広域交付|ただし兄弟姉妹の戸籍は取れない
2024年3月1日から、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村窓口で戸籍謄本をまとめて請求できる「広域交付」が始まりました。相続手続きに必要な「出生から死亡までの連続した戸籍」の収集が大幅に楽になった、この施策の中で最も実用的な成果です。
ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属(父母など)・直系卑属(子など)の戸籍だけで、兄弟姉妹や甥姪の戸籍は対象外です。兄弟姉妹が相続人になるケースでは従来どおり本籍地への請求が必要で、ここは実務上の大きな落とし穴です。詳しくは 法定相続人と相続割合の早見表|兄弟のみの相続・遺留分も解説 をご覧ください。
法定相続情報証明制度|戸籍の束を1枚に
集めた戸籍一式と相続関係の一覧図を法務局に提出すると、認証文付きの「法定相続情報一覧図の写し」が無料で必要枚数交付されます。以後は銀行・法務局・税務署などに戸籍の束を何度も出し直す代わりに、この1枚で相続関係を証明できます。相続手続き先が多い方ほど効果が大きい制度です。
相続登記のオンライン申請|義務化とセットで
不動産の相続登記は、登記・供託オンライン申請システムからオンラインで申請できます(添付書類の一部は郵送併用)。2024年4月1日からは相続登記が義務化され、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象になり得ます。オンライン化と義務化はセットで進んでいると考えてください。
まだ「できないこと」
「ワンストップ」という名前から期待されがちな次のことは、2026年8月時点ではまだできません。
| できないこと | 現状 |
|---|---|
| 死亡届・死亡診断書のオンライン提出 | デジタル庁が厚労省・法務省とシステム設計を検討している段階。現在も紙で市区町村へ提出(多くは葬儀社が代行) |
| 銀行・証券・保険など民間手続きの一元化 | 各金融機関ごとに個別の解約・名義変更手続きが必要 |
| 「1回の申請で全手続きが完了」する仕組み | 構想段階。手続きの洗い出しと個別の申請は今も遺族が行う |
つまり現状は「窓口の案内が一元化され、戸籍集めと登記が楽になった」段階であり、遺族がやるべき手続きの総量は、まだ大きくは減っていません。この点を誤解して「役所に行けば全部やってもらえる」と思っていると、期限のある手続き(相続放棄3か月・相続税申告10か月・相続登記3年)に間に合わなくなるおそれがあります。
行政のワンストップと行政書士のワンストップサービスの違い
同じ「ワンストップ」でも、行政の取り組みは「案内の一元化」、私たち士業のサービスは「手続き代行の一元化」であり、役割がまったく異なります。
| 行政のワンストップ(おくやみコーナー等) | 行政書士事務所のワンストップサービス | |
|---|---|---|
| してくれること | 必要な手続きの案内・書類作成の補助 | 戸籍収集から名義変更までの手続きそのものの代行 |
| 対象範囲 | その役所の中の手続きのみ | 役所+銀行・証券・不動産など民間手続きを含む全体 |
| 書類を集める人 | 遺族本人 | 事務所(職務上請求で戸籍を代理取得) |
| 費用 | 無料 | 有料(事務所・内容による) |
| 向いている人 | 手続きが少なく、平日に動ける方 | 手続きが多い・相続人が多い・平日に動けない・戸籍が複雑な方 |
当法人は名前のとおり、この「代行の一元化」を専門にしています。相続人の方にご用意いただくのは原則として印鑑証明書のみで、戸籍の収集、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、預貯金の解約、不動産の名義変更までを一括してお引き受けしています。詳しくは 当法人の相続ワンストップサービス をご覧ください。
死亡・相続ワンストップサービスでよくある質問
死亡届はオンラインで提出できますか?
できません(2026年8月時点)。死亡届と死亡診断書のオンライン化は、デジタル庁が厚生労働省・法務省とともにシステム設計を検討している段階です。現在も紙で市区町村に提出し、実務上は葬儀社が届出を代行するケースが大半です。
おくやみコーナーは無料ですか?何をしてくれますか?
無料です。亡くなった方の情報をもとに、その役所内で必要な手続きを洗い出し、申請書の作成を補助し、担当課へつないでくれます。ただし手続きの「代行」はしてくれず、銀行や不動産など役所の外の手続きは対象外です。
八王子市におくやみコーナーはありますか?
あります。2021年6月1日から市役所に開設されており、完全予約制です。オンラインで24時間予約でき、死亡届の提出から10日程度経ってからの利用が目安とされています。
戸籍は1か所でまとめて取れるようになりましたか?
直系の戸籍は取れるようになりました。2024年3月開始の広域交付により、本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫の戸籍は最寄りの役所でまとめて請求できます。ただし兄弟姉妹・甥姪の戸籍は対象外で、従来どおり本籍地への請求が必要です。
政府のワンストップサービスと行政書士のワンストップサービスは何が違いますか?
政府の取り組みは「どの手続きが必要かの案内」を一元化するもので、手続き自体は遺族が行います。行政書士のワンストップサービスは、戸籍収集から預貯金の解約・不動産の名義変更まで「手続きの実行」を一括代行するものです。両者は競合ではなく、併用できます。
まとめ
- 死亡・相続ワンストップサービスは、死亡・相続手続きの負担を減らす政府(デジタル庁)の取り組み
- 今できるのは、おくやみコーナー・戸籍の広域交付・法定相続情報証明制度・相続登記のオンライン申請
- 死亡届のオンライン提出や手続きの完全一元化は、2026年8月時点でまだ実現していない
- 八王子市のおくやみコーナーは2021年6月開設・完全予約制
- 行政の「案内の一元化」で減らせない部分(民間手続き・戸籍の複雑なケース)は、士業の「代行の一元化」で補える
制度は毎年少しずつ前進しています。当記事は制度の更新にあわせて内容を見直していきます。「自分のケースでは何の手続きが必要か」を知りたい方は、初回無料相談でお気軽にお尋ねください。
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【免責事項】本記事は2026年8月時点の公表情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。制度の内容・窓口の運用は変更されることがあります。最新の情報は各公式サイトでご確認のうえ、実際のご判断にあたっては専門家にご相談ください。
最終更新:2026年8月9日
