遺言書に対する7つの誤解

誤解1×『遺言書を残すほど財産はない』

みなさんが口をそろえて言う「財産はない…」というのはたいてい預貯金や有価証券のことを指していると思われます。そしてこう続きます。

「あるのはせいぜい家と土地ぐらい」……

!!!この言葉が1番怖いのです!!!

だいたいお金と違って物理的に分けようがありません。

現金ならば、相続人で法的な割合で分けることも可能でしょう。
ですが、書類上はできても実際には家や土地を兄弟で3等分…などできないのが現実。
ましてや、そこに住み続ける人と他に家を建てて暮らしている人では、その家に対する必要性が違います。

さらには1物4価といって固定資産評価額と路線価と取引価格では全く違います。
ここから、兄弟間での「遺産争い」に発展していくのです。

「売って現金化すればいいじゃない」

こういう言葉も聞きますが、故人の土地家屋の売却はすぐにできるものではなく、
相続人全員が了承・納得し、書面にして署名・捺印しないと(=これを遺産分割協議といいます)売却へ進めないのです。
それにおそらく住むところがなくなる人も出てくるはずです。

『うちは主な財産が不動産しかないから遺言書を作っておかなければ、残された伴侶や仲のいい子供たちが仲たがいをしてしまうかもしれない…』

そう、これが正解の言葉なのです。

お金は何億あっても分けられるけど今の家は簡単に分けられませんよ。

誤解2:×『うちは仲がいいから遺言書は必要ない』

そうですね。家族・親族関係がよいのは素晴らしいことです。
たしかに今家族の皆さんは仲良く暮らしているでしょう。

しかし数年後、それぞれが独立したり、各家庭を持ち、親族が増えて、孫ができて、事業も営んでいて…
家族関係や社会の状況が今と大きく変わっているかもしれない。

意見を出す人が多くなるかもしれない。

各家庭の経済状況が順調じゃないかもしれない……ことを考えてみてください。

というのは、子供たちは“法定相続分”という平等に相続する権利を持っており、
もし法的に有効な遺言書がなく親が亡くなった場合、それを基準に遺産分けの話し合いをすることになります。

例えば子供が3人いて3000万円の預貯金があったとします。

長男は同居して親の世話や介護もしてお葬式をしてお墓も守っていく、
次男は地方で結婚して家族がおり年に1回孫を連れて遊びに来る、
末弟はフリーターで連絡もなく所在もよくわからない…この3人は平等に1000万づつ分けられるでしょうか。

長男の思っていること。

「今までずっと親の面倒みてきて大変だったけど、これからこの家も先祖代々のお墓も守っていかなきゃならないんだ。弟たちなんかたまに顔を見せにくるだけで、ましてや一切電話もしてこないし、いい年していまだに定職にもついてない。」

次男の思っていること。

「母さんはうちの子供と会うのが本当に楽しみだったし、遠いけどなるべく実家に帰ってできることはした。兄貴は苦労なく住むところも手に入れていいよな。日々の生活費だって親のお金でまかなっていたし。うちなんか教育費のうえ定年まで家のローン払い続けるのに。」

末弟の思っていること。

「兄貴たちはちゃんと就職して家も家族もあっていいよな。俺なんかこんなご時世でどこも正社員なんかとらない時代だよ。家賃と生活費で手いっぱいだけど、三人で1000万づつ分ければかなり助かるなあ。」

でも、これはどれもその立場からすれば正しい意見です。

また話を聞きつけたその配偶者や親族、はては他人が野次馬のように口を出してきます。

長男妻の思っていること

「家と貯金は当然住んでいる私たちのもの。お義父さんとお義母さんのお世話でどれだけ大変だったとことか。私はろくに出かけられなかったし、病院の付き添いやら身の回りのお世話

次男妻の思っていること

「うちはローンと子供たちの教育費で今後いくらかかるんだか。年金だってもうアテにならないし、お義兄さんのところは家もお金もあるし、あの家はいらないから預貯金は全部もらっていいでしょう。」

末弟知人の言うこと

「法定相続分 ていうのがあって、子供は必ず1/3はもらえるんだよ。この前TVでもやっていた。 ネットで調べたら、特別受益とかいうのがあるらしい。ほかにその家も売ってみんなで分けるのが一番いいって前に知り合いが言ってた。」

……もうめちゃくちゃです。お葬式後、話し合いの段階で誰かが上のようなことをポロッと出そうものなら、実印押すどころではなくなります。

……でも…法的に有効な遺言書がない場合、
預貯金の解約、家土地の名義変更や売る時にはこの兄弟
全員の署名捺印と印鑑証明書が必ず必要になります。

逆に!!

遺言書があると、相続人全員の話し合いや署名・捺印等がいらないため、相続手続き・相続人の負担が格段にスムーズになります!!

(あまり知られていませんが、実はこれが公正証書遺言最大のメリットです。)

誤解3:×『遺言書を残すにはまだ早い』

多くの人は自分の終わりを考えるときにこう希望します。

「ボケたり寝たきりになって子供に迷惑をかけたくない。
病気が見つかって余命があとどれだけかがわかったら身の回りのことを整理しはじめよう。
家で家族にみとられて人生を終えたい」

……これはあくまでも希望です。

本当は子供ができたら(※子供がいない人は遺言書必須!です)
家を建てたら、事業をしていたら、すぐに考えなければならない問題であるのですが、どうも年金生活で病床に伏したら考えようという方が多すぎます。

TVで出てくる遺言を残す側の役の人や、市販されている本の挿絵などがあまりに、おじいちゃんおじいちゃんしているのが誤解を生んでいる大きな理由の一つでしょう。

公正証書遺言は認知症または判断能力が落ちているとされた場合作れません。(あくまで作るのは公証人の先生です)

たとえ自分で遺言書を書いたとしても、
「そのころはもうボケ始めていた」と言われれば、裁判所の出番となり、
最終的に遺言は無効になる可能性もあります。

まず、重病になった場合、自分の日々の食べること生きることで精いっぱいとなり、
よほどの事情がない限り、書類を集めるどころか財産は何がどこにあり誰に上げよう…なんて考えている余裕はなくなります。

ちなみに遺言書は15才から作ることができます。

誤解4:×『遺言書なんて縁起が悪い』

遺言書って聞くと、なんとなくでも良いイメージが湧かないのは何故でしょう?
これもTVドラマの影響?
でも、TVドラマのイメージって、亡くなった人が、その時の気持ちを綴った手紙=『遺書』なのではありませんか?

遺言書は、『遺書ではありません!』
私たちはみなさんにこう言っています。
『遺言書は、あなたの死後の家族設計図です』と。

今まであなたは自分の生活や家族のために生活費のやりくり、楽しい行事、家族設計など、
たくさんの計画をたててみんなが幸せにいられるようにしてきたはずです。

でも、今後のことはこう考えてはいないでしょうか?

自分が亡くなった後は家族それぞれで考えて何とかするだろう…

考えてみてください。
生前はいろいろな計画を自分でたてていたのに、亡くなった後はその財産をまかせてしまってよいのでしょうか?

今までを知っているあなたこそ、誰がこの家を必要としているか、誰が家業を継ぐべきか、誰にお墓を守っていってほしいか……など、
これから残された家族が幸せに生きて行くには、どうするべきかを一番わかっているのではないでしょうか?

遺された家族が、あなたの考えを知ることができる、唯一の手段です。
そう、‘あなたの家族の設計図’そのもの。
ですから遺言書は自分の死後、家族が困らないためにも、作成しておく重要な書類であると思っています。

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